今年は九皐会で二番のお役を賜わりました。十一月に「熊坂」を「替之型」の小書付きで致します。
内弟子修行を終えて、独立後九皐会で最初に舞った曲が「熊坂」でした。六月に致しました「賀茂」と同様、若い時の演目にひとまわりしてもう一回挑戦致します。
「初心忘るべからず」は世阿弥の言葉ですが、世阿弥はさらに「時々の初心」と言っています。年を取ったら取ったなりの演じ方があると言う意味だと思います。
どんなに若いつもりでいても、所詮若い時と同じように動き回ることはできません。しかしその年まで修行を怠りなく続けていれば、その年でなければ表現できないものがあるはずです。
実際は六十三歳だったと伝えられる熊坂長範を、還暦目前で致します。秋も深まりつつある頃の一日、矢来能楽堂へお出かけくださいますよう、お願い申し上げます。
「熊坂 替之型」について
牛若丸が金売り吉次に同行して平泉へ向う途中、美濃国赤坂宿で盗賊を退治した話は、義経記に見えます。それを元に能に仕立てられた本曲ですが、独特の頭巾を被った異様な面持ちの後シテに対し、前シテはワキと同じ僧です。僧が僧に供養を頼むと言う、少々おかしな設定なのが、かえって後半への伏線になっているようです。長刀を得物とする僧兵にあふれていた中世。その中の傑出した誰かを牛若の故事に託して、この曲の作者は舞台に再現したのだと思います。
お問合せ・お申込みは中所宜夫能の会へお願い致します。
TEL&FAX 042-550-4295(なかしょ)
Email nakashonobuo@nohnokai.com
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