来春の演能のご案内です。相模湖交流センターで『羽衣』を舞います。最初に作品についてのお話をして、休憩の後に能を舞うと言う企画です。能を舞う前にお話をするなど、本来は避けたいのですが、羽衣は一寸特別なのです。
何がどう特別なのかは当日のお楽しみとして、
以前にも載せた文章ですが、
羽衣のあらすじを再掲します。
ところでこの会場となる相模湖交流センターは、
高尾駅からひと駅ですので、
それ程遠くありません。
是非お出かけ下さい。
〈羽衣のあらすじ〉
春爛漫。早朝の三保の松原に強い風が吹いて、漁師たちは騒がしい。
白龍(はくりょう。ワキ)もその中のひとり。白い砂浜に松原が続き、朝霞に月が浮んでいる。風月を愛でるなんて漁師の柄ではないけれど、この景色の美しさには心奪われてしまう。まして西の方から清見ケ関を越えて来て、海を挟んでこの三保の松原を眺めたら、その美しさはとても忘れられるものではない。急に風が変って波が荒くなるように見えるけれど、春にはよくあることで、すぐ穏かになる。
まだ小舟が多く浦に残っている中、早々と浜に上った白龍は、あたりの異変に気付き、松の枝にかかる美しい衣を見つける。拾って持って行こうとする白龍を呼び留めた美しい女は、自分が天女であることを明かし、その衣がなければ天上界に帰れないのですと、嘆き悲しむ。
その姿の哀れさ、美しさに打たれた白龍は、天人の舞楽を聞かせてもらう約束をして衣を返す。少し疑う気持ちもあったが、「いや疑いは人間にあり。天に偽りなきものを。」と天女の声がご託宣のように響いて、とても逆らうことなど出来ない。
「永遠不変の天上界から、陰陽の二神イザナギとイザナミにより十方世界が分かれ、そのひとつの月の宮殿では、白衣の天女と黒衣の天女が十五人づつに分れて、満ち欠けを司る舞を舞っている。その私の舞を今この地に因んで駿河舞と名付けてこの世界に伝えましよう。」
この三保の松原の春の様子は天上の世界にも劣らない美しさ。そこに天女が舞を舞うと、自然の音も天上の音楽と聞こえ、落日の輝きも命の甦りを暗示しているようだ。
舞は永遠に続くかのように思われたが、天女の姿は空に上り、地上に祝福を与え、遥か富士の高嶺を目指して姿を消す。
〈あらすじ終り〉