2019年1月14日月曜日

2月21日(木)夜 石牟礼道子さん追悼公演

2月21日(木)、国立市のくにたち市民芸術小ホールで、パーカッショニストの加藤訓子さんとのコラボレーションによる石牟礼道子さん追悼の公演をします。
石牟礼道子の詩「花を奉る」を能の謡と舞、それにパーカッションによる現代音楽で表現します。

「花を奉る」はもともと水俣病の被害者の有り様を受けて詠まれた詩ですが、三一一後の世界に向けて、石牟礼さんが新たに発表した作品です。自分に何が出来るだろうかと焦燥に駆られていた時に、この詩に出会い、謡の節付けをして謡い始めました。その後それは新作能「中尊」 となり、2016年3月11日に福島の安洞院で演じることが出来ました。

加藤訓子さんとの共同制作をくにたち市民芸術小ホールが企画して下さったのが、2013年でした。その頃私はこの詩を作品化しようとしていましたので、この共同制作にもこの詩を取り入れ、「音霊言霊」という作品になりました。これはその後、相馬、豊橋、そして再び芸小ホールで再演を重ねたることとなりました。
今回は加藤さんが企画するパーカッションの祭典の中で、昨年二月に亡くなった石牟礼さんの追悼として、この詩をとりいれた「音霊言霊」の後半部分を演じようというものです。

皆様のご来場をお待ち申し上げます。

この日だけの一日チケットは私の方でも承ります。

中所 宜夫
nakashonobuo@nohnokai.com


2019年1月6日日曜日

演能のご案内 2月11日 「弱法師」


今年最初のシテは、 緑泉会例会の「弱法師(よろぼし)」です。 平成十四年に初演して以来の再演となります。

この曲は盲目の少年・俊徳丸が父・高安通俊と再会する物語です。
 舞台となる大阪の四天王寺の西門には今でも石の鳥居があります。 境内は少し高台となっていて、 鳥居の外に大阪の町並みを見渡すことができますが、 当時はそこには海が広がっていました。
また、舞台に作り物を出したりはしませんが、 その鳥居の傍らには梅の花が咲いています。 まだ寒さの厳しい中、 色も薄く密やかに咲きながら、 その芳香がこの曲を包んでいます。

さて、通俊が行う施行の場に、 弱法師となった俊徳丸が現れますが、 その変り果てた姿に父は我が子と気づきません。 梅の香に包まれた弱法師が、 天王寺の縁起を語っていると、 境内に鐘の音が響きわたり、 周りの全てに仏心が輝くと見えたその時、 父はそれと知るのです。
雑踏の中での父子の名乗りを憚った通俊に、 日想観(じっそうかん)を勧められて、 弱法師は入り日向って観想行に入ります。 鳥居の外に広がる海の向うに日は沈んで行きます。 夕闇に家路を急ぐ参拝客にぶつかりながら、 何とか杖を頼りに立ち上がった弱法師に、 通俊はついに名乗って再会を果します。

この曲の作者は世阿弥の跡を継ぎながら、 三十半ばで急死した十郎元雅です。 この背景には何かが秘められているようです。 通俊が讒言した者を「さる人」と言うのは、 その人の身分が高いことを思わせます。 おそらく、 この作品は元雅の死の一年前に作られています。

梅の花にはまだ早いかも知れませんが、 春を待つ一日、 是非能楽堂へ足をお運び下さい。

チケット等お問合せ先
TEL&FAX  042-550-4295 ナカショ
nakashonobuo@nohnokai.com