今年の11月3日(木祝)に東京・国立市のくにたち市民芸術小ホールの主催公演で、能『光の素足』を四年振りに致します。東京での公演は六年振りになります。
当日は、宮澤和樹さんのご講演もあります。250席程の小ホールですので、ご希望の方はお早めにお申込み下さい。
チケットのお申込みはこちらをご参照下さい。
チラシ裏面の文章を再掲します。
能『光の素足』について
周りに受け入れられないとか、未来に希望が見えないとか、 現在はとりわけ若い人の苦しみが増しているように思います。 自分もそういう苦しい思いをしながら、 でも世界や人間は素晴らしいのだ、 どんな人にも輝きがあるのだと、「世界が全体幸福に」 なることを夢見た人がいました。 100年前に東北に生きた宮澤賢治さんです。
能は650年くらい前に世阿弥さんが始めた芸能ですが、 自然の営みの中で生きる人間の力や波動の確かさを、 とても良く伝えてくれます。 賢治さんの言葉の力を世阿弥さんの方法で表現してみたのがこの作 品です。
始めに登場する少年は、山中でひとり剣舞(けんばい) を舞っています。躍動感と裏腹に孤独の陰を帯びています。 年老いた山人が突然現れて声をかけ、 少年の翳りに光を当てて行きます。 助けを求める少年に自分の力で乗り越えなければならないと説いた 山人は、その夜の再会を約束して姿を消します。
舞台は一転して銀河の星の世界です。童話「ふたごの星」 の物語をポオセ童子とチュンセ童子が再現します。
そして再び下界に戻り、 少年一郎は支度を整えて夜の山に向います。 銀河の流れる美しい夏の空に流れ星があるかと見るまに、 遥か彼方から金色の光が満ちて光の素足が現れます。 この大きな人は賢治さんの言葉を少年に伝えます。 やがて一郎は光の素足の力を受け取り、 気がつけば元の丘の上に目を覚まします。
その言葉の中に「雨ニモ負ケズ」が出て来ます。 賢治さんがこれを書いた手帳の傍らには「11.3」 と記されています。もしこれが11月3日を表すのであれば、 この公演はそれから85年目の出来事となります。